M&A実務と企業価値評価のセミナー

タイトルのセミナーに参加してきました。

前回2回も参加していましたが、僕的には一番面白く勉強できた回でした。
以前参加したときのエントリーで書いた、もっと知りたいと思ったことの部分が話の中心だったと思います。

講師の田中さん保田さんがおっしゃっていた、バリュエーションは仮定の仮定の上に成り立っていて、ある意味アートのような分野だ、という指摘はまさに言いえて妙だし、実務に携わっている人と、外からその人たちを見ている人との間にある、認識のギャップが大きい部分であるような気がする。

ファイナンスを学ぶ時、大体前段でアカウンティングを学ぶ。
教科書なんかも「財務・会計」等と一緒になっていたりする。
しかし、アカウンティングは過去に起こった事をどう表現するかという事が中心だし、ファイナンスについては将来何が起こるかを予測する手段という事で、実はものすごく異なる頭の使い方をする仕事だと思う。

ただ学んだだけの人間は、アカウンティングが持っているある種の確かさというか、既に現実のものになっている過去の事実を裏付けに表現をすることの安心感から入って、その流れのままファイナンスを学んでしまうので、いわゆるアートな部分が理解できないというか、そもそもそういうものではないというようイメージを最初に持ってしまうような気がする。

そういった意味で、ファイナンスの教本の一番最初にそういう違いや、ファイナンス理論が持っている本質的な特徴(多分にアートな分野である)という事が説明されていたら、もっとすんなり実務的な頭に切り替えられていたんじゃないかとおもう。

そんな意味で、昨日の講義は、起業価値の算定方法という部分だけでなく、いわゆるバリュエーションを生業にしている人たちが、どのように仮定を構築するのかという、実は実際使いこなすには必要な情報で、それでいて意外と一般的に流通していない情報に接する事が出来た事は、大変にありがたかった。

例えるならば、絵の先生に絵を書くための道具は、この種類の筆と絵の具とパレットだよって教えられただけの人間が、実際にこの筆をこう使うとこんなタッチの絵になりますよ。。。っていうところまで教えてもらえて、なるほどー!と喜んだ感じです。

あと、最初にM&Aのプロポーザルをもって行く時には、業界のドメイン知識や先方の事業計画についての情報が十分じゃないので、いくつかの算定モデルを持っていって、先方にある程度精度の高いモデルを選ばせながら、詳細なバリュエーションを行っていくというような話もあって、僕は聞きながら、これって受託開発する際にプロトタイピングをしながら要件定義をしていくSEみたいなしごとだなー等と思い面白く感じました。

いずれにしても、純粋にファクトだけを集めてあるロジックを作るよりも、説得力のある「仮定」をつくる事の方がずっと難しいし、その人が持つ本質的な力量が問われるだろうなー。

今回の貴重な機会を頂いた、講師のお二人とダイヤモンド社のご担当者様、に感謝いたします。